粉粒体の定義と分類
粉粒体にちなんだ語句

 
<粉粒体の部屋(1)>                      <音声あり>
 私達の周りには,「粉」や「粒」があふれています。ここでは,これらを扱う粉粒体技術」の基礎を紹介しています。

粉粒体(ふんりゅうたい)とは :   
 粉粒体とは,粉体(ふんたい)」 粒体りゅうたい)」の総称で,こな状の物質やつぶ状の物質をひっくるめて考えています。

 私達の身の回りには,いろいろな粉粒体を見ることができます。これらの中には,人工的な手を加えない自然の産物も有りますが,ほとんどは,工業的な粉粒体技術を応用したものです。

 粉粒体は,必要に応じて少量でも大量でも各種の取り扱い(輸送や混合,成形など)が出来るので,工業素材のみならず,そのままの形で製品としても広く使われています。

 「
粉粒体の部屋では,そのような「粉粒体」の物性と応用例/適用例を説明しています。
 また,粉粒体の物性(特性)を生かし,取り扱うための一般的な技術や装置については,
粉粒体ハンドリングの部屋で説明しています。

 一般的には,「粉粒体」は異なる大きさの分布をもつ多くの固体粒子からなり,個々の粒子間に,何らかの相互作用が働いているもの(神保他,「粉体」,1991,日本規格協会)と定義されます。

 つまり,いろいろな大きさの粒子が集まり,それらが互いに影響をおよぼしあっている集合体の総称ということになります。
   
  実際,手元に“粉粒体”が有った場合,それらは一粒一粒の粉粒体粒子で構成されていますが,それらは決して皆均一の同じ大きさ(粒度)では無く,よく見ると小粒子から大粒子までの異なったサイズの粒子から成りたっています。つまり,粉粒体を構成する粒子には,分布があるということです
(右図にその例を示しています)。

「粉」・「粉体」を表す言葉(語句) 
(1)粉体広辞苑には粉体(ふんたい)という語が出ていないことから想像すると,一般的な言葉とはいえないかもしれません。しかし,粉体によく似た語として,下記のような多くの言葉が使用されています。

1 (こな)

2 (ふんまつ)
粉末

3
(びふん)
微粉

4
(ちょうびふん)
超微粉

5 (ふんじん)
粉塵

6 (ばいじん)
煤塵
7 (つぶ)

8 (りゅうし)
粒子
9 (りゅうたい)
粒体
10 (さいりゅう)
細粒
11 (かりゅう)
顆粒
12 (そりゅう)
粗粒
13 (そりゅうし)
素粒子
14 (ペレット)
pellet
15 (チップ)
chip
16 (フレーク)
flake
17 (パウダー)
powder
18 パーティクル)
particle
19 (グラニュール)
granule
20 (バルクソリッド)
bulk solid

21 (パーティクルマター)
particulate matter
22 (ファインパーティクル)
fine particle




さらに,医薬製剤の分野では,薬剤が,散剤細粒剤顆粒剤錠剤などに分類されます。

(2)おしろいと「ふんたい
国語辞典(角川書店版)によれば,化粧に使われるおしろいには白粉という字が当てられること,ふんたいには粉黛が当てられ,その意味として,「おしろい(白粉)まゆずみ(黛)」,「化粧」,「美人」が挙げられています。

<参考>
(a)白粉花(おしろいばな):
白色や黄色の花もある白粉花は南米原産で,別名を夕化粧,英語名をFour o'clock(フォーオクロック)といいます。これらの名称は,この花が,夕方に咲き朝方にはしぼんでしまうことに由来すると思われます。
種を割ってみると,中から白い粉体が出てきます。江戸時代には,この粉体を文字どおり「白粉」の代わりにしたこともあったようです。

(b)粉体からなる白色顔料,赤色顔料についての記述をしています。
 
(3)宇宙の塵
 広い
宇宙からみれば,地球などの大きな惑星のようなものです。また,宇宙の(ちり)という言葉もあります。(さらに最近では,壊れた人工衛星やその破片など,宇宙に漂っていて,スペースシャトルなどがぶつかると非常に危険な宇宙のゴミも問題になっています。)
 そこで,このHPでは,独断と偏見で,惑星のような大きい場合も含めて,
粉粒体としています。
宇宙の粉粒体参照。


粉粒体の粒度と分類 :

 
どの範囲が粉体あるいは粒体なのか,研究者によりいろんな分類がなされており,明確な定義はありません。そこで,以下に分類の例を紹介します。

(1)  30μm~50μm以上を「粒体」,それ以下を「粉体」とする。
                 
(神保著 粉体の科学,1985,講談社)

 これは,粒子間の相互作用力である付着力重力の大きさの大小で「粉体」「粒体」を分類するものです。すなわち,30μm~50μmを境にして,小粒子は付着力の方が大きいので「粉体」とし,それ以上の大粒子は付着力より重力(分離力)の方が優っており「粒体」とする考え方です。

(2) 粉体」とは : 「通常,1mmより小さい固体粒子のゆるい集合体または凝集体。」
            
(マグローヒル科学技術用語大辞典,1996(第3版)日刊工業新聞社)

(3) 粉粒体を4分類し,大きい方から,以下のように定義する。
No. 区分 範囲
粒体 1mm以上
粗粉体 10μm以上~1mm未満
微粉体 0.01μm以上~10μm未満
超微粉体 0.0001μm以上~0.01μm未満
                  (川北著 粉粒体のトラブル対策,1980,日刊工業新聞社) 

(4) 粉粒体を4分類し,大きい方から以下のように定義する。
No. 区分 範囲
粒体 数十μm以上
粉体 約 3μm~数十μm
微粉体 0.3μm以上~約3μm
超微粉体 0.001μm以上~0.3μm
                   (神保著 粉体の科学,1985,講談社)
 
(5) 私の分類:独断と偏見で次のように4分類してみました。
No. 区分 範囲
粒体 1mm以上
粉体 1μm以上~1mm未満
微粉体 0.1μm以上~1μm未満
超微粉体 0.001μm以上~0.1μm未満




各種粉粒体(粒子)の粒度範囲(サイズスペクトラム)
 
 以下に,自然界に普通に存在するものも含めて,各種粉粒体(粒子)の粒度範囲の例を示します。

このような粉粒体を観察する場合,
微細部分まで識別可能な大きさは,目視の場合約10μmまで,
光学顕微鏡では約1μmまで,電子顕微鏡では約0.01μm(=1nm)までとされています。


 
粉粒体ではありませんが,一般に,細菌の大きさは0.5~10μmで,これは光学顕微鏡で見えますが,ウイルスはそれより小さく(0.05~0.5μm),電子顕微鏡でないと見えません。

 
(ちなみに野口英世博士が研究していた黄熱病は,病原体がウイルスでしたが,当時はまだ電子顕微鏡が無く,観察できなかったことが知られています。また,世界を震撼させたSARSウイルスの大きさは,0.08~0.16μm(=80~160 nm)とのことでした。

 
工業的には,1μm以下では無機物粉体,1mm以上では有機物粒体(プラスチック類)が多く使われているようです。


粉体関係の学会,団体 
 次のような粉粒体関係の学会,団体等が存在します。
粉体工学会(社)日本粉体工業技術協会(社)粉体粉末冶金協会・・・・など
(なお,粉体工学はPowder TechnologyあるいはParticulate Technologyと訳されています。)

 以下の雑誌も有ります。
粉体工学会誌」,「粉体技術」,「粉体および粉末冶金」,「粉(KONA)」,「粉砕
Advanced Powder Technology」,「bulk solid handling」,「powder handling & processing 」,
POWDER TECHNOLOGY」 など

 

粉体に関係ある熟語 
(1) 身を粉(こ)にするの意味と語源自己を犠牲にして献身的に勤めること
<語源>
江頭五詠
 「丁香」
丁香體柔弱 亂結枝猶墊。
 細葉帶浮毛 疎花披素艶。
 深栽小齋後 庶使幽人占。
 晩堕蘭麝中 休懷粉身念。


(「
杜甫全詩集,第2巻」)
<丁子>
   
 
 (読み下し)
ちょう こうたい にゅう じゃく なり。 らん けつえだ なお る。

さい よう もう ぶ。 えん ひら く。

ふかさいしょう さいのちねが わくは ゆう じん をして めしめん。

ばんらん じゃなか つるも, ふん しん ねんいだ くを めよ。

(詩意)
(植物としての)丁子は,その幹は柔かく弱そうに見えるが,それでも枝は茂り,垂れ下がっている。
その細い葉の表面には産毛がたくさんあり,花はまばらではあるが,つやつやしている。
この木を小さな書斎の後ろに植えて,占有したいものである。
晩年に,
香のする貴いものの中に落ち込んだとしても(宮廷に勤めるような機会が訪れたとしても),おのが身を粉(こ)にしてまで(自己を犠牲にしても誰かのために尽くそうなど)と,考えるのは止めたいものだ。
(そんなことをすれば、きっと自らが傷つくことになるのだから・・・)

(注)
(a)江頭五詠中国の代表的詩人である杜甫が,揚子江のほとりの粗末な建物で詠んだとされる五つの歌。
(b)丁香丁子
(ちょうじ)のこと。丁子は植物であり,お香の原料にもなります。
 中国語で「丁子」は「釘」を意味しますが,これは,ツボミの形が釘の形に似ている
(上の写真参照)
 ことからついたようです。

(c)=体
(たい)
(d)
小齋小さい書斎。
(e)
幽人
自己。
(f)
蘭麝高貴に匂うもので,「宮廷」を意味します。

  ⇒<参考>正倉院に,有名な香木である蘭麝(奢)待があります
 天下一の名香あせず-1200年前の正倉院・蘭奢待- 
 
表面樹脂が封じ込める 阪大研究   (読売新聞 2003,6,17<夕刊>より引用),

 「天下第一の名香」として奈良・正倉院に伝わり,足利義政織田信長(後に明治天皇)が楽しんだとされる香木「蘭奢待」が現在も中国から渡来したとされる約1,200年前当時の芳香を保ち続けていることが大阪大総合学術博物館の米田該典助教授(薬資源学)による成分分析でわかった。
「蘭奢待」
<長さ1.56m,重さ11.6kg>
蘭奢待はインドシナ半島産の可能性が高い沈香という種類の香木で,火であぶると甘い芳香を放つ。長さ1.56m,重さ11.6kg。天皇もしくは天皇の許可を得たものだけが切り取ることができ,信長らが切り取ったとされる付箋が残っている。

香りは有機化合物「セスキテルペン」が組合わさった様々な成分からなり,米田助教授は
蘭奢待から採取した微量の成分をクロマトグラフィー法で分析し,現代の沈香と比較。その結果,どの成分構成もほぼ同じで,香りが損なわれていないことがわかった。

聖武天皇の遺物として正倉院に残る沈香
全浅香(ぜんせんこう)」も香りの成分に変化のないことが判明。これに対し,同じ宝物の白檀(びゃくだん)の破片は香りが逃げてしまい,普通の人間の嗅覚ではにおいがわからないほど成分が変化していた。

「全浅香」
<長さ1.06m,重さ16.7kg>
米田助教授は「沈香は時間が経つにつれて表面の樹脂が固まり,香りを封じ込めているのではないか」と話している。
(g)粉身念粉身とは香の縁語で,丁子をお香の原料にするのに粉砕することから,身を粉に砕くこと
 
「自己を犠牲にして献身的に勤めること
」を意味します。

(2) 粉骨砕身の意味と語源力を尽くして努力すること。
(a)「禅林類算(ぜんりんるいさん) : 粉骨砕身するも,此の徳に報い難し
  
       ⇒(力の限り尽くしても,仏の恩に報いるのは難しい。)
(b)「証道歌(しょうどうか)」:
  (唐の僧玄覚(げんかく)の禅の教えを説く歌): 
粉骨砕身未だ酬(むく)ゆるに足らず

(3) 玉石混交の意味と語源(ぎょく)は宝石の意味があります。宝石と石が混ざっているように,
良いものと悪いものが入り交じった状態をいいます。
 晋の渇供(かっこう)「抱朴子」外扁の尚博扁で,軽薄な詩をもてはやす世間を嘆いた言葉が
語源とされています。

(4) 和光同塵の意味と語源優れた能力を隠して,俗世間の人々と交わること。

和光
は本来の光(知恵)を和らげ,隠すこと。また,同塵は世の中のと同じになること。
「其(そ)の光を和げ,其の塵に同じうす」と、そのままの文章があります。(出展:「老子」)


“人はとかく自分の才能や知識をひけらかし目立とうとする。すると,何か禍いが起こった時に,
目立つ者がまっ先に害にあう。だから,なるべく才知は表に出さず,俗世間の塵の中にまみれて
いるのが良い”という人生哲学です。

(5) 粒々辛苦の意味と語源こつこつと地道に努力して,物事を成し遂げること。
粒々皆辛苦の略で,米一粒一粒が,農民の努力や苦労の賜であることから。

 唐の李紳
(りしん)の詩の句に基づきます。
 
 --農を憐れむ 李紳--

 
(いね)を鋤(す)いて日午(ひご)に当る
  汗は滴る禾下
(かか)の土
  誰か知らん 盤中
(ばんちゅう)の食(そん)
  粒粒皆辛苦なるを


 ⇒(稲の草取りをして、午時(ひるどき)になると、汗が土に滴り落ちる。
   皿に盛られた食べ物は,一粒一粒がみな農民の苦労のお蔭だと誰が知る。)

(6) 一粒万倍(いちりゅうまんばい)の意味と語源一粒の籾(モミ)が万倍となって,稲穂のように実るということ。

わずかなものが非常に大きく成長することの例えとされます。
また,少しでも粗末にできないという気持ちも表します。

一粒万倍日」:大安と並んで縁起が良く,何事を始めるのも良いとされる吉日のことです。

例えば 2014年の一粒万倍日
1月 4,5,8,17,20,27 5月 8,9,20,21 9月 2,10,17,22,29
2月 1,4,11,16,23,28 6月 1,2,15,16,20,21 10月 4,14,17,26,29
3月 5,15,20,27 7月 10,13,22,25 11月 10,11,22,23
4月 1,11,14,23,26 8月 3,6,9,16,21,28 12月 4,5,7,18,19,30,31
 

鼻煙壷(びえんこ) 大阪市立東洋陶磁美術館において,平成20年7月19日から9月28日まで,鼻煙壷1000展が開催されました。日本人コレクター(沖 正一郎氏)が大阪市に約1,200点もの寄贈をされたことを記念してのものでした。

鼻煙壷(びえんこ)とは,
粉末状の嗅ぎタバコを入れる小さい(高さ5~6cm)容器のことで,表面に微細できれいな文様が施されたものです。

これらは中国の
清朝の宮廷で流行したものが多く,容器の材料は一般的な陶磁器からガラス(赤,白,緑,透明),金属,石(ごく普通のものからトルコ石,孔雀石,石英・・・),さらには動植物(象牙や種etc)にいたる多くのもので,(形も凝ったものが多い),興味深いものでした。

(1)
粉彩
桃樹図鼻煙壷
(パンフレットから引用)
(2)
夾彩
花文鼻煙壷
(パンフレットから引用)
(3)
緑ガラス白被せ
花文鼻煙壷

(パンフレットから引用)
その他の粉彩文様鼻煙壷

  (1)と(2)は陶磁器製容器の上に,(3)はガラス製容器の上に彩色したものです。

  
以下は場内での説明文です。
(1) 粉彩桃樹図鼻煙壷
器表の一部に花樹を描き,その先端が裏面に延長していく表現方法は,清時代特有のものです。本作品もその手法で桃樹が描かれています。桃は長寿を表し,蝙蝠(こうもり)は音が福に通じ,全体で寿福を表しています。

(2) 夾彩花文鼻煙壷
器表全面に様々な花文をちりばめ,余白を魚々子(ななこ)地で埋めた装飾的な作品です。花文には,粉彩磁に特有の中間色が多用され,花弁の内側は丁寧にグラデーションで塗り分けられています。

ちなみに粉彩とは,ヨーロッパの七宝技術の影響を受けて清朝時代(1,700年代)に完成した上絵の一種で,白磁の容器表面に不透明な白色顔料で文様の下地を作り,その上から様々な色の顔料で絵付けをしたものだそうです。 i色の微妙な濃淡の描き分けが可能で,色調の変化を利用した多彩な文様表現に特徴があります。また,夾彩とは,粉彩の技法で容器の全面を埋め尽くしたものをいうようです。



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