粒子状物質PM2.5
浮遊粒子状物質SPM
ディーゼル車排ガス粒子DEP
ありがたくない粉粒体(2)
<粉粒体の部屋(8)>  ここでは,ありがたくない粉粒体の例(その2)として,粒子状物質(PM)浮遊粒子状物質(SPM)を紹介しています。最近,大気汚染の問題というより,CO2削減の観点から,ガソリン車からEV(電気自動車)への切り替えを目指す動きが広まっています。

粒子状物質PM),浮遊粒子状物質(SPM) :
PM(Particulate Matter)とは,大気中に浮遊している固体または液体の微細な粒子状物質をいいます。
またPM(微細な粒子状物質)のうち粒径10μm以下のものをSPM(Suspended Particulate Matter)といい,最近では粒径2.5μm以下の
PM2.5が注目をあびています。

これらには
(a)自動車や工場の排ガスなどに起因する浮遊粉塵や(b)酸性雨・光化学スモッグ中の微粒子(硫酸粒子と有機物粒子),(c)エアロゾルなどが含まれ,太陽光線を遮ったり,それ自身が化学反応を起こしたりして,地球表層の環境をコントロールしているといわれています。また,それ以外にも大気汚染物質として,健康への悪影響が心配されています。

特に,平成25年1月中旬以降,中国では,家庭で発生する暖房用石炭の燃えかす,工場からの煤煙,自動車の排ガスなどが原因で広範囲に大気汚染が発生しています。これは
PM.2.5と呼ばれる微細な(=大きさ2.5μm以下)粒が空気中に大量浮遊しているためですが,それが日本国内にも大量飛来していることが大きな問題になっています。


(a) 『中国大気汚染 日本迫る(2013,1,31読売新聞(夕刊)より引用)
  −九州などで確認 春,顕著に−(高速閉鎖 受診急増 北京)
  

中国東部で深刻な状態になっている大気汚染物質が,日本まで飛来することに懸念が出ている。環境省によると,1月10日夜から北京を中心に中国東部で大気汚染が発生し,11〜14日,主要各都市で汚染が確認された。       
       
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(b) 西日本漂う汚染物質 (2013,2,5 読売新聞より引用)
  −各地で基準値越す−影響心配 受診者相次ぐ
大気汚染が深刻な中国から飛来したとみられる汚染物質「PM2.5」が,西日本各地で国の基準値(注)を上回る濃度を記録している。
花粉や黄砂の季節を前に出現した新たな脅威に,専門家は「すぐに健康被害が出る恐れはないが,注意は必要」と呼びかける。

 一方,肺や心臓に疾患がある人は注意を促し,「窓を開け放つのをやめ,濃度の高い日はできるだけひかえてほしい。外出の時はマスクをした方が良い」,「帰宅した際は,うがいなどで汚染物質を体内に取りこまないようにしてほしい」と訴える。
     
       
(注)国の基準値は,1日平均:35μg/1m31年平均15μg/1m3

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(C1) 『大気汚染 北京混乱(2013,2,1 朝日新聞より引用) 
−各病院に子の列・マスク売り切れ−(暖房石炭・排ガス原因か)  
・北京では,咳き込む子供が病院に詰めかけている。
・北京で1月,PM2.5の測定値が,米大使館の基準で「危険」とされる250μg/m3を超えた日は15日以上。
・北京大学などは,昨年12月,北京・上海・広州・西安ではPM2.5が原因で8,500人が早死にし,経済損失は68億元(約980億円)に達するとする研究結果を発表した。

(C2) 中国でのPM2.5の現状,黄砂飛来シーズンの前に
     <再生ボタンを押してください><音声あり>

2013,2,28 NHK-TV,
ニュースウオッチ9より引用)


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 (d)  深刻化するインドの大気汚染
 
     <再生ボタンを押してください><音声あり>

2014,11,22 NHK-TV,
NHKニュース7より引用

ニューデリーの汚染は北京の3倍!


ディーゼル車排ガス中黒煙微粒子(DEP) 
  ディーゼルエンジン排ガス中の微粒子DEP(Diesel Exhaust Particulate; 黒煙粒子は,発ガン性や気管支喘息および花粉症等との因果関係が調べられつつあり,特に東京都など都市圏を中心とする自治体では,規制を強化しています。

(1)
ディーゼル車の排ガス中の成分と外観
 
排ガスに含まれるものには,目に見えるものと目に見えないものがあります。

                              <
排ガス中の成分
(a) 目に見えるもの ディーゼル車の排ガス中の黒煙中に含まれる「すす」のことで,「スート(soot)」または「ドライスート」ともいいます。これは,蒸発した燃料ガスが空気不足の状態で高温になり,分解して生じるもので,非常に細かい球状粒子が鎖状につながったような集合体を形成しています。<写真参照>
(b) 目に見えないもの 窒素酸化物(NOX)等の燃焼生成物のことで,燃料中の成分が高温で完全燃焼すると発生します。この窒素酸化物が太陽の光を浴び,光化学反応を起こすと,「オキシダント(oxidant)」という物質に変わります。これが光化学スモッグです。光化学スモッグは気温25℃以上の晴天で,風の弱い日に多く,目やのどが痛くなる症状が発生するので都道府県が注意報を出します。

<スートの外観> (大きさが異なります)
<画像をクリックすると拡大します>



(2)
ディーゼル車の排ガスと健康の関係
 
(A)
東京大気汚染訴訟判決平成14年10月29日(東京地裁)

 ディーゼル車の排出ガスが原因で健康被害を受けたとして,東京都の住民99人がメーカー7社と国などを相手取り損害賠償を求めた訴訟です。 判決では,国,東京都,首都高速道路公団の責任を認めた一方,メーカーの責任については病気と排ガスの因果関係が証明されないとして,認めませんでした。

  (B)ディーゼル車排ガスと花粉症の関連に関する調査委員会報告書」:

   平成15年5月,東京都の依頼による調査結果が出されました(会長:柳川洋 埼玉県立大学学長)。
 
 この調査では,ディーゼル車排ガスと花粉症との関係を明らかにすることを目的として,疫学調査を中心に環境調査,花粉症発症メカニズム調査が総合的に実施されました。 主な結果は,以下のように報告されています。

                             <調査結果の概要

(a)
都内4地区の成人女性を対象に実施した疫学調査では,ディーゼル車排出ガスが花粉症患者の割合を増加させているという証明は得られませんでした。
(ただし,報告書は,今回の調査が対象地域や対象者が限定されたものであることに鑑み,さらに地域や対象者を拡げての調査が必要と述べています。)

(b)
スギ花粉症患者の血液成分にディーゼル車排出微粒子を添加したところ,花粉症の症状を発現したり,悪化させたりする物質が増加することを明らかにしました。

(c)
ラットを用いた動物実験で,妊娠期やほ乳期にディーゼル車排ガスの影響を受けると,スギ花粉症を引き起こしやすい体質になることも,初めて示しました。
                                            <注> (B)の情報は,東京都のHPを参考にしました。

  (C)ドイツ環境省の報告書(201838日)」:

  『主にディーゼル車から排出される二酸化窒素(NO
2)が,2014年にドイツで6,000人の早期死亡につながった』とする驚きべき報告書が発表されました。



(3) 最近の自動車排出ガス規制について :

(a) 自動車NOx 法 

<正式名称>
「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」

酸性雨などの原因となり,呼吸器や農作物にも悪影響があるとされる窒素酸化物(NOx)は,自動車の排ガスの要因が大きいとして,これの削減を意図したものです。

平成5年12月から施行されています。
(b) 自動車NOx ・PM法
<自動車NOx法の改正,強化>
窒素酸化物NOxの強化に加え,最近問題になっている粒子状物質(PM)も自動車の排ガス要因が大きく,特にディーゼル車の排ガスによる浮遊粒子状物質(SPM)は,発ガン性,気管支喘息,花粉症などとの因果関係が疑われるとして,これらの抑制を意図したものです。

対象地域:東京都,埼玉県,千葉県,神奈川県,大阪府,愛知県,三重県,兵庫県
施行:平成14年10月1日より

対象地域に使用の本拠を置く商用車(ディーゼル,ガソリン,LPGをそれぞれ燃料とするトラック,バス);ディーゼル乗用車が,NO
x,PMの排出基準を満たさない場合は,車検証が交付されません。

(c) 東京都環境確保条例/他

<正式名称>
「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」
粒子状物質(PM)による環境汚染を改善するために,条例地区内のディーゼル商用車(トラック,バス)の走行を規制する条例です。

対象地域:東京都,埼玉県,千葉県,神奈川県,横浜市,川崎市,千葉市,さいたま市
施行:平成15年10月1日より

自動車NOx・PM 法に適合していても(対象地域を走行するだけでも)規制を受けます規制値をクリアするためには,トラック運送事業者は,@圧縮天然ガス(CNG)車やA液化天然石油ガス(LPG)車,Bガソリン車,C「酸化触媒」付き最新規制適合のディーゼル車など低公害車への買い換え,または,D8都県市が指定する粒子状物質PM低減装置(下表)の装着が必要になります。

            粒子状物質PMの低減装置

構造 効率 特徴
(a) 排ガス中のPMをフィルターで捕集し,燃焼することにより除去する装置
DPF;Diesel Particulate Filter)
70%以上 大型,高価
(80〜130万円)
(b) PMを白金などの触媒で酸化除去する装置 50%以上 小型,低価格
(30〜40万円)

(d) 大気汚染防止法に基づく「排ガス許容限度」 <ディーゼル車の排ガス規制の強化>(下図参照)
                       
 <対象:トラック・バスの新型車>
No. 規制 日付 PM値
(g/kW・h)
NOx値
(g/kW・h)
備考
(1)
平成15年10月以降 0.25以下 4.5以下
(2) 新短期 平成16年8月以降 0.18以下 3.38以下
(3) 新長期 平成17年10月以降 0.027以下 1.698以下
(4)
平成21年以降 0.01以下
(注1)
0.7以下
(注2)
世界で最も厳しい
  
(注1) PM値は,検出限界以下(=事実上ゼロ)となります。
(注2) NOxの排出量も,ガソリン車とほぼ同水準となり,世界で最も厳しい規制になります。なお,重量3.5トンを超えるディーゼルトラックやバスのNOx値は,平成20年頃に改めて技術検証し,0.7gの1/3程度に削減する「挑戦目標」が導入できるかどうかを判断するとしています。
(環境省の中央環境審議会大気環境部会が平成17年2月22日に発表した案)
●ヨーロッパ:PM値0.03g/kW・h以下(2005(平成17)年より)
●アメリカ  :PM値0.013g/kW・h以下(2007(平成19)年より)

(排ガス規制値の変遷)

(4) 最近の環境問題に伴う次世代自動車の開発について :

   G20サミット(主要20カ国首脳会議,2020年11月21〜23日)でも取り上げられた環境問題
ここにきて世界は,
大気汚染防止というより地球温暖化(CO2量減少)の観点から,近い将来,ガソリン車やディーゼル車の販売を禁止し,EV(電気自動車)へと切り替える動きが急加速しそうです。
(しかし,その電気を供給するために,火力発電が増えて大気汚染が進むなどすれば,本末転倒です。)

  −進むEVシスト−    
   NHKニュースウオッチ9
(2020,11,24)NHK-TV
から引用


イギリス:2030年までにG車,D車の販売禁止
アメリカ,カリフォルニア州:2035年までにG車販売禁止
フランス:2040年までにG車販売禁止
中国:2035年をめどに全車種をEV車,HV車にする工程表を作成中
ドイツVW社:2025年までにEV車を150万台以上販売
 

 
   WBS(ワールド ビジネス サテライト)
(2020,12,04)テレビ東京
から引用


日本政府方針:
2030年代半ばに新車販売を電動車に限定
(ガソリン車販売を」禁止)
しかし,軽自動車はコストUPの予想,余談許さず
 

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