直線上に配置

粉粒体の貯蔵装置と排出装置
 
<粉粒体ハンドリングの部屋(2)>

 ここでは,粉粒体の貯蔵装置排出装の概要を紹介しています。

粉粒体の貯蔵装置とは:工業素材としての粉粒体を一時的または長期的に貯蔵保管しておく装置で,貯槽ともいいます。

貯槽の名称貯槽には,以下の名称のものがあります。
(1) サイロ
(silo)
多くは円筒型設置面積が狭く,高さの高い(細長い)容器をいいます。
容量は通常大きく,1000m3,2000m3といった大型のものもあります。
内容物は,穀物,セメント,プラスチックペレットなどです。
(2) バンカー
(banker)
角形が多く,矩形断面になっており,大型の場合は内部が仕切られています。
石炭の貯蔵に設けられることが多いようです。
(3) タンク
(tank)
粉粒体だけでなく液体等の貯蔵にも用いられます。
小容量のものから大容量のものまであります。
(4) ビン
(bin)
同上
(5) ホッパー
(hopper)
容器断面が円錐状または角錐状に,流出口に向かって減少している容器です。タンクやサイロなどの下部の構造がそうなっています。

貯槽の形状の例 : 以下のように分類できます。
(1) 用途,機能からの分類 (a)密閉型,(b)開放型
(2) 平面形状からの分類 (a)円形,(b)多角形型,(c)円弧組み合わせ型
(3) 立面形状からの分類 (a)ホッパー型,(b)スカート型,(c)平底型 (⇒下表参照)


形状 寸法 特徴 @用途例,A材質
(a) ホッパー型 H=0.62D
H+S=1.62D
最も一般的,架台脚(3〜4本)で支持 @一般用
A金属板(アルミ,SUS)製
(b) スカート型 H=2.62D
H+S=3.62D
サイロの下部をスカートで支持
(一部を切り欠き入口を形成,ここからローリー車等が出入りする)
@穀類用,化学工業用など
A金属板製,コンクリート製
(c) 平底型 H=D 高さと直径が同じ @セメント,アルミナなど粉体の大容量貯蔵用

(a)(ホッパー型) (b)(スカート型) (c)(平底型)
ホッパー型貯槽(サイロ)
容量1000mの場合,
D=8m,H+S≒25m
スカート型貯槽(サイロ) 平底型貯槽(タンク)


粉粒体の貯槽の特異性 粉粒体の貯槽は,液体の場合と異なり,特異な現象が現れます。 

(1) サイロ等深槽での粉体圧(静止時粉体圧
粉体(a)または液体(b)において, 液体(b)では,水深が大きくなると,液体圧はそれに比例して大きくなります。
これに対し,粉体(a)では,粉体圧Pvが,液体圧(b)より小さくなることが知られています。
これは,
粉体と貯槽壁面との摩擦力により,粉体の重量が壁面部で支えられることによります。
この粉体圧Pvの変化は,ヤンセンの式で表すことができます。


                 ****** 粉体圧と液体圧の違い  *****
(注)ヤンセンの式での記号の意味
Pv:粉体圧(=鉛直方向の面圧),γ:かさ密度,:ホッパー径,:ホッパー高さ,μW:壁摩擦係数,
:水平方向と鉛直方向の圧力比(=Ph/Pv

<数値例>

(a)PET chip:

(b)PE:

【計算式】
(a) 胴部(H1)の垂直応力Pv1の計算
ただし,
(b) コーン部(H2)の垂直応力Pv2の計算
ただし,

(2) 粉体排出時の動的粉体圧
  粉体を貯槽から排出する際の圧力は,静止時の数倍に達する場合のあることが報告されています。

(3) 粉体排出時の閉塞(へいそく)
  流動性の悪い粉体付着性のある粉体)は,ホッパーからの排出時に,アーチングブリッジを発生し,閉塞しやすくなります。また,中央部に穴があいてしまうことがあります(ラットホール)。
 そのような粉体では,ホッパー部に
排出促進部品エアブラスター,エアレータ,バイブレータ,ノッカー等)を設けるか,適切な排出装置テーブルフィーダ等)を選択する必要があります。
(粉体投入時) (粉体の排出時)
<アーチング;ブリッジ>  <ラットホール>
(4) ファンネルフロー (ファネルフロー) と マスフロー(Funnel Flow & Mass Flow)
(ファンネルフロー) (マスフロー)
  粉粒体をホッパー等から排出する際,一般に,中央部の流下速度が大きく,側壁部近辺では遅くなりますが,この現象をファンネルフロー (ファネルフロー)といいます。

 これに対し,サイロ等へ投入した粉粒体を先入れ先出しする(先に投入したものから順に排出していく)ためには,
マスフローが必要になります。

 
マスフローのためには,下図に示すように,@ホッパーのコーン角度を小さくしたり(θ1→θ2),A内部に笠状のインナーコーン(コーンバッフル)を入れたりします。

 これらの状況は,以下のVTRで確認できます。
マスフロー化の例@ マスフロー化の例A
(コーン角度の鋭角化)(θ1<θ2) (インナーコーン)
(コーンバッフル)
<<ファンネルフローの状況 および インナーコーンによるマスフロー化の実例>>
  (以下のVTRは,円筒状の透明ホッパーの中央縦断面を正面から見ています)(粉体:PTA粉体)
<再生ボタンを押してください> 

<ファンネルフロー> <マスフロー>
排出前
排出時
説明 ファンネルフローにより,
ホッパーの中央部のみが排出)
マスフローにより,粉面全体が低下)


粉粒体の排出装置  粉粒体をサイロ(ホッパー)等から払い出しするための装置で,以下のようなものが有ります。

(1) ダンパー (a)上下2枚のしゃへい板を交互に動かし,気体のリークを防ぎながら,粉粒体を排出します。
(b)流動性の良い粒体では開度の調節によりほぼ定量的に排出されます
(c)
フラッシング性(噴流性)のある粉体では定量性は得られにくいようです。

(2) ロータリーフィーダ
(ロータリーバルブ)

(a)粉粒体の排出装置として,最も一般的な機器です。
(b)円筒状でポケットのあるロータと,ロータを収めるケースからなり,通常はクリアランスを100〜200μm設けます。
(c)ロータの回転数を変化させ,排出量の調整を行います。
(d)最近,圧力300kPa程度までの領域で使用できる高シールロータリーバルブ(高シールロータリーフィーダ)が開発されています。
この機器の主要なポイントは,ローターのサイドからのリークを如何に抑えるかということです。

(3) テーブルフィーダ (a)水平面上で回転するテーブルに粉粒体を載せておき,かき取り排出します。
 一般的にはテーブルに設けられたマスの中に粉粒体を投入して回転させながら排出します。
縦型のロータリーフィーダともいえる構造です。
(b)投入口をロータリーバルブより大きくできるので,排出困難な粉粒体にも使えます。
(c)反面,ロータリーフィーダよりシール性は劣ります。

(4) スクリューフィーダ (a)水平な円筒内にスクリュ−を入れ,これを回転させ,粉粒体を排出する方式です。
(b)ほぼ定量的に排出できます。
(c)一般に,付着性のある粉粒体でも排出可能です。
(d)動力がやや大きいという問題があります。

(5) エアスライド
粉粒体ハンドリングの部屋(5)
参照)
(a)平底型貯槽やブロータンク底部(ホッパー部)に用いられ,キャンバスや焼結金網を介して気体を投入し,粉粒体を流動化させ排出する方式です。
(b)流動性のある粉体に特に適しています。
(c)粒体や湿気の有る粉体,微粉は流動化しにくく,どちらかと言えば不向きです。

(6) 回転床式 (a)平底型貯槽で,床面に払い出し用バケットチエ−ンを設け,これを回転させて粉粒体を排出する方式です。
(b)粉粒体としては,木材,パルプ,穀類などの排出に用いられています。


 
                                                                
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