直線上に配置

木之本町杉野おこない
(琵琶湖の周辺(67)) 
(平成25年2月9,10日撮影)


<音声あり>



滋賀県長浜市木之本町杉野地区に,2月9・10日連続で行ってきました。

杉野は,滋賀県(木之本)から岐阜県に抜ける国道303号線沿いにあり,周囲を山々に囲まれた戸数100戸ほどの集落で,北村・中村・向村の3地区に別れています。

3地区では別々に
「おこない」が行われているようですが,今回は中村区のそれを見せてもらうことができました。

今年は湖北では例年より雪が少なかったのですが,それでも10日の本日
(ほんび)には小雪も降り,身の引きしまる寒さ(ー6℃)の中で行われました。

杉野の風景
ここは周囲を山に囲まれた集落です。屋根から大きなツララが下がっていました。

おこないの舞台:薬師堂 薬師堂への登り口 薬師堂からみた村の景色 創業250年の宿:長治庵

 2月9日午後5:00〜: 集会所にて餅つきが始まりました。
(以前は北区と南区に分かれ,2軒の頭屋でそれぞれやっていたそうです。)
以前南北あった名残で,
臼は2つあります。
他所のおこないと同様,
餅を丸めるのは男性です。
薬師堂に備えるための,
大きな餅です。
女性は横で見るだけで,
手がだせません。

 <再生ボタンを押してください><音声あり>
餅つきの終了間際には,
千本搗き」が行われ,その後,杵の先に付けた少量の餅を欄間に設置した板ににじり付けます。
板は頭屋2軒分2枚有ります。
板に付着した餅の量が多いほど良いとされています。

餅つき後,飾られた花や餅。
左にあるのは,餅を背負うためのワラ細工です。
花は造花ですが,1週間前から男女共同で製作されたそうです。 自治会長の挨拶で直会が始まります。花飾りの前にいるのは,今回の北と南の役員の人達です。 直会はうどんを中心に,お酒とつまみがあり,私達部外者も頂きました。

2月10日 午前3:20〜起こし太鼓から始まります。
午前3:20 起こし太鼓。
小学生も参加しています。

気温は氷点下でとても寒いです。
午前4:00
身体に塩をつけ,お湯で流し,浄めてもらいます。
行列出発前の宴会。
南北双方から使者を出し,もてなしをします(昔の名残)。

足にゲートルを巻き,草鞋を履いて出発の準備です。

 <再生ボタンを押してください><音声あり>
午前5:00
小雪のちらつく中,自治会長を先頭に
行列の出発です。

目指すは300m先の薬師堂です。
薬師堂の前の道路で,南北双方の対応する役同士が,『人神儀合い(じんあい)』とよばれる動作をします。
お互いに,歌舞伎のように見得を切る演技をした後,薬師堂へと階段を登っていきます。

 <再生ボタンを押してください><音声あり>
お堂の中では松明を持った人々が,背中合わせでうち鳴らす鐘の周りを何やら唱えながら(注)回り続け,5分もしないうちに煙が充満し異様な雰囲気になります。 しかしそれも午前6:00になる直前にピタッと終わり,薬師にお詣りする人もいます。
静けさの戻ったお堂の中では,その後,女性や部外者を入れず,役員等の関係者だけで祝詞(しゅうし)が行われます。


(注)
『薬師の前で〜燃えた燃えた 燃え鉄砲の勧進じゃ〜』と聞こえます。

<参考文献>
1 「オコナイ 湖国・祭りのカタチ」:中島・上田・原田著,中島監修,INAX出版発行,2008,6,15 
2 「近江古事風物誌-さざなみの回廊めぐり-」:高橋真名子著,河出書房新社発行,2009,12,20 
トップ アイコン トップページへ戻る 前のページへ次のページヘ