直線上に配置

近江妙連
大賀ハス
琵琶湖の周辺(33)
(平成18年7月8,22日;平成19年7月22日撮影) <音声あり>

 滋賀県守山市に在る近江妙連公園の大日池と瑞蓮池では,この時期,全国的にも珍しいハスの1種である近江妙連咲いています。

 このハスは,インドを源とするハスの突然変異種で,600年
以上も前から,田中家代々によって受け継がれて来ました。明治時代以降,68年間開花しない時期もありましたが,世界的に有名なハス博士・故大賀一郎によって蘇り,今日に至っています。

 1406年,近江妙連が室町幕府3代将軍・足利義満公に献上されたという故事にちなみ,今年(平成18年7月20日)600年ぶりに「
平成の献上」として,義満公を安置している京都北山鹿苑寺(金閣寺)に献上されました。


近江妙連とは :  600年以上前から滋賀県守山市川田町田中地区の大日池で,田中家代々に守られて来たハスのことで,昭和40年に天然記念物に指定された以降に定着した名前です。

 
近江妙連の仲間は,国内では,金沢(加賀妙連),府中(武蔵野妙連)などごく少数地でしか見られません(しかも,どちらもこの近江妙連から移植されたもの)。
 一方,国外では,中国雲南省湖北省の2地域で,このハスが見られるようです。

 なお,足利義満に献じられた「多蓮記」によれば,この妙連は,中国南北朝時代(およそ1,000年前)に達磨大師によって南インドから中国に伝わった後,天台宗の僧・慈覚大師がそれを持ち帰り,大日池に植えたのだそうです。


 
昭和40年,近江妙蓮と大日池が滋賀県天然記念物に指定され,同50年に近江妙蓮が守山市花に制定されました。

<クリックすると拡大します>
近江妙連 案内 大日池(妙連池)と大日堂 大日堂と八幡神社
(大日堂には,大日如来が安置されています。なお,八幡神社は別地に移されています。)


近江妙連の形 :  近江妙連は,花びらの先が赤くなる通常のハス<常蓮>が八重化し,1本の茎に,花びらの数2,000〜5,000枚,花の数2〜12もの花が咲く特殊なハスです。

 また,常蓮は開花を繰り返し4日で散るのに対し,この妙連は一旦開花すると
閉じることはなく,外側の花弁を少しづつ散らしながら20日近く咲いています。その後は,頭を垂らすようにして,立ち枯れます。<昭和45年 大阪万博では,数百年前の枯れ花が出品されました。>

 しかし,
おしべ・めしべが無く種子ができないため,地下茎(蓮根)でしか繁殖できません。
このことは,妙連が環境変化に弱い植物ということを示していますが,このような妙連を
600年以上も保護育成した労苦は大変なことであったろうと推察されています。

(双頭連?)
(双頭連:1茎2花) (品字蓮:1茎3花)
  (雨に濡れると,花びらが黒くなるようです)


(以下の画像は,平成19年7月に追加しました。)
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近江妙連の歴史   妙連を日本に持ち帰ったとされる慈覚大師遣唐使(〜874年)であり,当時の時代考証(渡海の困難さや,後に足利義満公に花が献上された年<1604年>)からすると時期がやや早いと考えられるため,現在では,@足利義満公が派遣した「遣明使」が持ち帰ったか,あるいはA中国・明からの貢ぎ物の中に妙連の蓮根が入っていた,等も考えられています。

 義満公は,この妙連の蓮根を,
近江守護職の佐々木六角満高に対し,琵琶湖のほとりで育成するように命じたとされ,さらに六角満高に命じられた田中左衛門尉頼久は,屋敷の西側にある八幡神社の庭に丸池を掘って蓮根を植えたようです。妙連はその2年後に開花し,義満公に献上されました(1,604年)。また,その時蓮池の守り本尊として,大日堂が建立されました。

 
その後,妙連は足利義持公によって皇室にも献上され,江戸時代になっても,わざわざこの地に立ち寄り見学した大名がいたり,歴代の徳川将軍家や皇室への献上が続けられたようです。

このように由緒ある歴史的な妙蓮でしたが,明治29年から後は開花しなくなりました。田中家や地元の人々は大変残念に思い,昭和31年,世界的なハス学者である大賀(おおが)一郎博士に依頼し,妙連池の復興に取りかかりました。


 
大賀博士の研究により,加賀妙連が,もともと近江妙蓮から移植されたものであることが判明しました。そこで,博士は昭和35年に,加賀妙蓮の蓮根をこの近江妙蓮に再移植した結果,昭和38年,68年ぶりの開花に至ったのです。
 
(昭和58年に再び開花しなくなった時は増殖事業により復活し,今日に至っているとのこと)

 
今年(平成18年7月20日),「平成の献上」として600年ぶりに,足利義満公の安置されている京都北山鹿苑寺(金閣寺)に近江妙連が届けられました。


大賀一郎博士と大賀ハス   ハス博士として有名な故・大賀一郎氏<元 東大農学部教授>は,昭和26年(1951年),千葉県検見川遺跡(東大厚生農場,現 東大検見川総合運動場)で,泥炭層から丸木船等とともに,3個のハスの種子を発見。うち1個の発芽に成功しました。このハスの種子は,2,000年以上前のものとわかり,全世界に衝撃を与えました。

その後,このハスの子孫は,大賀ハスとして全国各地に移植されています。

滋賀県でも,
野洲市歴史民族博物館前の弥生の森歴史公園において,昭和63年から栽培されています。
(注,野洲市歴史民族博物館は,この地で,高さ1.5mという
国内最大の銅鐸が発見されたのを記念して建てられました)

(野洲市歴史民族博物館前歴史公園に咲く大賀ハス <平成18年7月>)


<参考文献>
1. 「近江妙連」(別冊 淡海文庫9),中川原正美著,2002,7,20,サンライズ出版刊
2. 「近江妙連」,中川原正美著,2006,7,20,守山市・近江妙連保存会
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