変わった粉粒体-3
花火
<粉粒体の部屋(6)-3> びわ湖花火大会の様子はこちらです。

 花火の構成成分と形態花火は(1)炎色剤,(2)可燃剤,(3)酸化剤等から成っています。
 いずれも原料は粉体です。
 
(1) 炎色剤 燃やすといろんな色に発色する金属化合物をいいます。
基本は,「
リアカ−無きK村,動力借るとするもくれない馬力」と覚えた炎色反応の色です。
チウム→トリウム→色,(カリウム)→,動()→カルシウム→,馬(リウム)→
なお,この炎色剤は通常,燃焼にはほとんど寄与しません。


(炎色反応の例)

(a)
赤色炭酸ストロンチウム硝酸ストロンチウム,(b)緑色硝酸バリウム,炭酸バリウム
(c)
黄色蓚酸ナトリウム,(d)青色花緑青,酸化銅,(e)白色アルミニウムなどです。

(2) 可燃剤 炎色剤が燃焼するのを助けます。
(例)木炭粉,硫黄,金属粉,澱粉,三硫化アンチモン,セラック,セロシン(木粉),油煙,鶏冠石など。

 
(a)最も古くから使用されているものは,硫黄と木炭粉です。そのうち,木炭粉は,麻,松,桐から作られるものが良く使われるようです。
 (b)金属の微粉体は高温で燃える可燃剤であると同時に火花を出す効果も得られます。なかでも
アルミニウム微粉体は代表的で,爆発的に燃やす場合や明るい火花を出す時に用いられます。また,チタン微粉体も良く使われ,他には鉄粉,マグネシウム粉なども使われます。

(3) 酸化剤 酸素を供給して,炎色剤の瞬時燃焼を促進します。
花火が水中などでも燃えることができるのは,この酸化剤を含むためです。
これらは,消防法で決められた「
危険物(第1類 酸化性固体)」に相当します。
(例)硝酸カリウム,塩素酸カリウム,過塩素酸カリウム,塩素酸バリウム,過塩素酸アンモニウムなど。


 (a)
硝酸カリウム(KNO3は最も古くから用いられてきた酸化剤です。この粉体は融点が低い(334℃)ため,着火性は良いが燃焼温度は低く,明るい炎になりにくい性質があります。
 (b)
塩素酸カリウム(KCLO3が明治時代初期から盛んに使われるようになりました。これは,燃焼温度が高く明るい炎になるため,多用されましたが,多くの爆発事故を起こし,現在では使わないようになっています。
 (c)
過塩素酸カリウム(KCLO4は,現在最も良く用いられている酸化剤で,融点が高いため(610℃),燃焼温度が高く明るい炎になります。
 
(d)過塩素酸アンモニウム(NH4CLO4も使われますが,爆発威力が高いため,ロケット推進薬の酸化剤として良く利用されているようです。

(4) 結合剤 原料粉体を固めるのに使われるバインダーをいいます。
これには,粉砕した米の粉体を原料にした糊状のものが使われています。
長所は(a)少ない量で多くの粉体を固めることができること,(b)水溶性のため危険な粉体を湿潤状態で混合,造粒できることです。
反面,(a)乾燥(天日乾燥)に時間がかかること,(b)金属微粉体が腐食しやすくなる短所があります。

 花火の構造 代表的な花火である「打ち上げ花火」の基本構造は,以下の(1)〜(4)です。
(1) 玉皮:  
(たまがわ)   
段ボール紙などを貼り合わせた丸いお椀状の入れ物(プレスで半球状に成形したもの)に,花火の原料である「」と「割り火薬」を「間断紙」で隔てて整然と詰めた後,同じ物2つを貼り合わせて作られます。

(2) :     打ち上げられた上空で花弁のように広がり,発色します。
これは,牧草の種や菜種,セラミックの小粒などを芯材として,その周囲に多種類の粉体状の火薬成分を層状にまぶしながら,乾燥も加えて,徐々に大きくし,団子状に造粒して作られます(直径10〜30mm)。

(3) 割り火薬 玉皮」を爆発させ「」に点火し,「」を周囲に広く飛び散らすためのものです。
これは,「星」と同様に,綿の実やモミガラなどを芯材にして粉体状の火薬をまぶしながら,乾燥も加えて徐々に大きくし,玉状に造粒したものです(大きさは「星」より小さくなっています)。

(4) その他 (a)導火線は,打ち上げてからの上昇時間(割り火薬に点火するまでの時間)をもとに長さが決められます。材料は紙管です。
(b)花火を打ち上げるための火薬は「揚薬(あげやく)」といい,黒色火薬が使われています。これは硝酸カリウム/硫黄/木炭粉の3成分混合物です。
     <花火製造過程>

YTV読売TV(2020,03,07)
所さんの目がテン!夏よりキレイに見える?冬花火から引用

 
 花火の大きさと到達高さ : 玉殻の大きさが基準になっています。
 呼び方は
尺貫法によります。
   
呼称 直径(公称) 直径(実測) 玉の重さ 到達高度 開花時直径
(−) (cm) (cm) (kg) (m) (m)
3号玉 3寸(9cm) 8.5 0.2 120 60
5号玉 5寸(15cm) 14.2 1.3 190 170
6号玉 6寸(18cm) 16.7 2.0 220 220
7号玉 7寸(21cm) 20.5 3.0 250 240
8号玉 8寸(24cm) 23.5 4.8 280 280
10号玉(1尺玉) 1尺(30cm) 29.5 8.5 330 320
20号玉(2尺玉) 2尺(60cm) 58.5 70 500 480
30号玉(3尺玉 3尺(90cm) 88.5 250〜280 600 550

 いろんな花火:    
     <線香花火>      
   
   
YTV読売TV(2020,11,25)
嵐にしやがれから引用
   

<花火打ち上げの実際>(滋賀県近江八幡にて (平成22年4月10日観察))
(1)<連発式
打ち上げ花火 >(2号玉,3号玉,4号玉)
     
最左:4号玉〜最右:2号玉
花火投入と導火線準備中。
同左,ほぼ準備終了。
これら35個を,1分間連続で打ち上げます。
花火外観 打ち上げ筒には
花火を2個ずつ入れます。

(2)<単発式打ち上げ花火>(4号玉)  


単発での打ち上げ筒



直近での打ち上げが終わった後は,田んぼの畦に寝ころび,花火の真下から撮影しました。

<大型打ち上げ花火>(3尺玉)  

テレビ東京(2012,08,30)
和風総本家 日本の職人24時から引用

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