宇宙の粉粒体(4)
イトカワ,はやぶさ
<粉粒体の部屋(7)> <音声あり>

宇宙の「」という言い方があり,地球や火星などの惑星も広い宇宙では,のようなものです。ということで,このHPでは,これらも独断と偏見で,“粉粒体”の範疇に入れることにしました。ここでは変わった粉粒体の例としてイトカワについて紹介しています。


イトカワ(小惑星)



日本の探査衛星「はやぶさが小惑星イトカワに向けて打ち上げられて以来,挙動を見守ってきました。その「はやぶさ」7年の旅を経て,イトカワを構成する岩石試料を採取して,地球に帰還しました。人類が地球以外の物質を探査機により採取したのは,アメリカ「アポロ計画」月の石や同「スターダスト計画」のすい星のちりに続く歴史的な快挙です。

 イトカワは,1998年(平成10年)に発見された太陽の周りを回る小惑星です。軌道は地球と火星の間にあり,地球との距離は,比較的近い場合でも約3億kmあります。
 大きさは小さく,長さ約540m×幅最大約300m (535m×294m×209m) の細長いジャガイモ形をしています。自転周期は約12時間。日本のロケット開発の父といわれる故
糸川英夫博士の名を取って命名されました。

 そのイトカワに向けて,日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)2003年(平成15年)5月9日,鹿児島県種子島宇宙センターから,M5ロケットに乗せて探査衛星「はやぶさ(重さ約510kg)を打ち上げました。「はやぶさ」は,平成17(2005)年9月,イトカワ上空に達し,地球から持参した約88万人分の名簿を投下しました。

「はやぶさ」は,表面の映像を撮影すると共に,表面の試料採取に2度挑戦しましたが,失敗・・・・,とされていました。また,その後の機器の損傷により,帰還は不可能とされていました。しかし,関係者のあきらめない努力により復旧し,7年後の
2010年(平成22年)6月に帰還しました。しかも,カプセルには多量のイトカワからの採取試料が入っていることが判明し,太陽系成り立ち解明への大きな手がかりに寄与するものとなりました。


(a)「はやぶさ」今夜「イトカワ」着地へ
−長嶋さん 小惑星でも永久に不滅 (投下金属球に88万人名前刻印)

 (読売新聞 2005.11.12 より引用)
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宇宙航空研究開発機構の探査機「はやぶさ」が,日本時間の19日夜から20日早朝にかけ,小惑星「イトカワ」への着地岩石採取を試みる。着地の目印としてイトカワ表面に透過する金属球(直径約10cm)には,長嶋茂雄・読売巨人軍終身名誉監督など149カ国約88万人の名前が刻まれており,永遠に小惑星にとどまる記念碑となる。

約88万人は,同機構が3年前に行った世界公募に応じた人達で,長嶋さんの他,映画監督のスティーブン・スピルバーグさん,俳優ポール・ニューマンさんなど海外の著名人も多く含まれている。
金属球内のアルミ箔に刻まれた名前は,約0.03mm角と微細な文字で,
半導体の微細構造を作る特殊技術が使われた。

地球以外の天体から試料が持ち帰られた例は,米アポロ計画での「月の石」しかない
(注)月より遙かに遠い場所での岩石採取を目前に控え,長嶋さんは「壮大な航海がいよいよクライマックスにさしかかり,胸をわくわくさせています。アポロ計画にも匹敵する宇宙研究開発史上の壮挙です」との談話を寄せている。
(注)実際は上記のように,アメリカ「スターダスト計画」のすい星の塵の例もあります。


(b)探査ロボ 放出失敗?
−地球から命令遅れ 小惑星到達 困難に−
 (読売新聞 2005.11.20 より引用)
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小惑星「イトカワ」の岩石採取に世界で初めて挑戦する宇宙航空研究機構の探査機「はやぶさ」は,12日,イトカワの地表を探査するロボット「ミネルバ」を放出した。だが,同機構は同日夜の会見で「地表面に到達できない可能性が高くなった」とし,ミネルバによる地表探査が困難になったことを示唆した。

<イトカワとの通信>

地球から2億9000万km離れたイトカワとの通信には片道約16分もかかるため,遠隔操作ではなく,搭載コンピュータで秒速数cmの動きを制御する自立航法機能が搭載されていました。

探査機「はやぶさ」がイトカワ地表面に陸したときの想像図。機体から伸びた採取装置が岩石や砂ぼこりを取り込む。 はやぶさはイトカワ上空990mから秒速3cmで接近。 着地と同時に,メガホンのような形の装置で地表の岩石や砂ぼこりを集め上昇する。


(c)イトカワの岩石採取成功
−最先端の探査技術実証,太陽系形成に解明に期待(来年6月カプセル回収)−
 
  (日刊工業新聞 2005.11.28 より引用)
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宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「はやぶさ」が26日,小惑星「イトカワ」に再着陸し,岩石試料の採取に成功した。小惑星の試料採取は世界初で,地球に帰還・回収できれば,米アポロ宇宙船や旧ソ連の無人探査機が「月の石」を持ち帰ったのに匹敵する快挙となる。日本の宇宙探査技術が世界最先端の水準にあることを示したと同時に,約46億年前の太陽系の形成過程の解明が大きく進むことが期待される。


26日は7時7分頃着陸。約1mの採取塔を瞬間的に設置させ,内部で金属球を発射した。地表から岩石片が飛散し,帰還カプセルに収納されたとみられる。20日の初着陸時の教訓をふまえ,障害物センサーを無視するよう設定したほか,少しでも採取量を多くするため,金属球を0.2秒間隔で2発発射する工夫をした。採取量は数百mgと考えられるという。(注.実際は金属球が発射されていなかったようです)

(d)東大総合研究博物館での展示見学彗星の踏査にて(2007,12,15) <平成19年12月15日>

『「はやぶさ」は約2ヶ月半にわたりイトカワの観測を行いました。
その結果,イトカワ表面の化学組成は,「
普通コンドライト」とよばれる隕石の化学組成に近いことが確認されました。

「はやぶさ」のこの発見は,隕石と小惑星の関係を明確にし,
隕石の物質科学と観測科学とを対比できるようにしたという画期的なものでした。』
(説明パネルより)
小惑星イトカワ
長さ:約540m,幅:最大約270m
 表面重力は地球の1万分の1と非常に小さいにもかかわらず,クレータや地滑りなど地質現象の生じていたことが確認されました。
イトカワの表面
イトカワの地表面は岩石に覆われ,その内部にも空隙が多く存在することから,大小のガレキの集合体であると考えられています。
 

(e)エンジン再起動 探査機「はやぶさ」10年に地球帰還目指す
                                    (京都新聞2009.02.5より引用)

  『はやぶさ再点火 残るエンジン1台 地球へ(朝日新聞 2009.02.5より引用
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宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4日,小惑星イトカワへの着陸に成功した探査機「はやぶさ」の地球帰還に向け,2007年10月から止めていた推進用イオンエンジンを再起動させた,と発表した。はやぶさは現在,太陽を挟んで地球とほぼ反対側の約3億キロかなたを航行中。10年6月の帰還を目指す。打ち上げ以来の総飛行距離は約45億キロになる見通し。(京都新聞)

宇宙機構によると,はやぶさはイトカワの軌道離脱後,07年10月にイオンエンジンを止め,慣性飛行をしていた。今後は,地球と同じように太陽を回る軌道を飛行しながら,イオンエンジンによって,少しずつスピードを上げ,地球との距離を縮めていく。しかし,はやぶさの4台あるイオンエンジンのうち,正常に働くのは1台だけ。帰還までにはなお高い壁を残している。(朝日新聞)

(想像図:宇宙航空研究開発機構提供)


(f)探査機「はやぶさ」帰還ピンチ エンジン1台停止(読売新聞2009.11.09より引用)
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地球と火星の間の軌道を回る小惑星イトカワへの着陸に成功し,地球帰還を目指している日本の探査機「はやぶさ」のエンジン1台が停止したことが9日、明らかになった。「はやぶさ」の4台あるエンジンのうち,2台はすでに劣化などで動かしていない。残る2台を使って,地球を目指していたが,今回のトラブルにより,動くエンジンは1台のみとなり,帰還できない恐れが出てきた。


(g)はやぶさ 再び地球へ(読売新聞2009.11.20より引用)
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4台あるエンジンのうち3台が停止し,小惑星イトカワから地球への帰還が危ぶまれていた日本の探査機「はやぶさ」について,宇宙航空研究開発機構は19日,故障していた2台のエンジンを組み合わせて1台のエンジン分の推進力を得ることに成功したと発表した。もう1台のエンジンの温存が可能となり,予定どおり来年6月に地球へ帰還できる見通しとなった。

(h)はやぶさ:6月13日帰還 7年間45億キロの旅終え(毎日新聞2010.3.28;4.21より引用)
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宇宙航空研究開発機構(JAXA)は21日,人類初の小惑星の岩石採取に挑戦した探査機「はやぶさ」が6月13日に地球へ帰還すると発表した。はやぶさ本体は大気圏突入後に燃え尽きる。はやぶさに搭載されたカプセルは直径約40センチ。大気圏突入速度は秒速12キロ、温度は1万〜2万度の高温に達するため、カプセルを燃え尽きさせないで地上に落下させることが最後の難関となる。

不調のエンジンを動かし続ける最大の山場を越え,6月の地球帰還がほぼ確実になった。
今後は,エンジンを短時間噴射して進路や大気圏へ突入する方向を調整する以外は,基本的にエンジンを動かさない慣性飛行を続ける。



(i)はやぶさ帰還2010.8.7 「サイエンスゼロ」(NHK)より引用)
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<音声あり>

(j)はやぶさ1,500個採取,イトカワの微粒子と判明(読売新聞2010.11.16より引用)
はやぶさが持ち帰ったカプセル内の試料容器から見つかった微粒子約1,500個について,宇宙航空研究開発機構(JAXA)は16日,(a)微粒子がイトカワのものであること,(b)大きさは1〜10μmであること,(c)大半がかんらん石輝石などの岩石で,地球の岩石より鉄の含有量が非常に大きいと分かった,との分析結果を発表した(要約)。

(k)イトカワ微粒子の外観
イトカワは密度が1.9g/cm3と,他の小惑星より非常に小さく,内部に空隙の多いラブルパイル小惑星と考えられるようになりました。ラブルパイルとは,ガレキ(ラブル)が積み重なった(パイル)構造であるという意味です。

イトカワは,太陽系初期に形成された微惑星を起源とする母天体が(他の天体との)衝突によって一度破壊された後,その破片が再び重力によって集まり,形成されたと考えられています。


宇宙航空研究開発機構(JAXA)提供:
平成24年10月28日,粉体工業展パネルより引用

(l)イトカワ微粒子に多数の穴(読売新聞2012.2.28より引用)
はやぶさが持ち帰った微粒子の表面には,さらに小さい宇宙のちり(宇宙塵(じん))が衝突した跡が多数あることを,岡山大学の中村栄三教授らが明らかにした。
 直径40μmの微粒子表面に,直径0.1〜0.2μmの小さな穴が多数見つかった。穴の周囲は盛り上がっており,直径0.01μm前後の宇宙塵が40km/s以上の高速で衝突したとみられる。

(m) イトカワ微粒子の分析状況    
 
  041MBS毎日放送TV
「報道特集:打ち上げ迫るはやぶさ2」
(2014/11/8)より引用

<岡山大学 中村教授> 

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<音声あり>

 
 
 (粒子は50μm)
   読売新聞
2018,08,08より引用
 
大阪大学などの研究チームは7日,2010年に探査機「はやぶさ」が小惑星イトカワから地球に持ち帰った微粒子の年代分析に成功した,と発表した。

イトカワの元になった母天体が約46億年前に形成され,23〜7億年前頃に別の天体が衝突して誕生したことが,鉱物の分析で裏付けられたという。
 
       
 
  

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