花粉
花粉症
花粉症対策 <音声あり>
ありがたくない粉粒体(1)
(スギ花粉(雄花)
<粉粒体の部屋(8)−花粉と花粉症> (約30μm)

【ありがたくない粉粒体の例】として,スギ花粉・ヒノキ花粉と,花粉症について紹介しています。
 
 ⇔⇔⇔⇔花粉は,歴史の研究・解明に役立つ(↓最下段の動画)という面もあります。

・・・・最近注目されているスギ花粉症対策について・・・・
 (a)シダトレン(商品名)の服用   <舌下(ぜっか)免疫療法>
  
(a)スギ花粉症患者の60〜70%が完治すると言われています。
  (b)服用方法
   <1>スギ花粉症が治まる6月頃から始める。
   <2>スギ花粉症のエキスを含んだ薬(シダトレン)を毎日1度,舌の下に垂らし,2分間保持した後,飲み込む。
  (c)保険適用になります(2週間で1,000円程度の治療費)。

<原理>
日常生活で取りこまれるよりも多い量のスギ花粉エキスが体内に入ることにより,IgE抗体の増加を抑える
     働きが活性化し,IgE抗体と花粉との結合を妨害する抗体が増える。
<利点>自宅で簡単に適用でき,長期間の症状緩和が期待できる。
<注意点>治療期間は最低2年間必要;口内炎・のどのかゆみなどの副作用の可能性あり;医師の指導が必要など。

(b)無花粉スギの実用化
  最近ようやく実用化の兆しが見られます。VTR参照。
  富山県森林研究所(斎藤真己主任研究員)の開発した
立山 森の輝き
  
富山県は,2014年以後5年間で8万本を植樹予定とのこと。  
   <再生ボタンを押してください>     
  >  ( 2013.2.10,TBS-TV,
 「夢の扉+」から引用)
 
<音声あり>
 


(1)平成27年の花粉飛散量と時期の予測:
 
 例年,環境省(日本気象協会)から,スギ花粉が飛び始める時期を予想したスギ花粉前線の予測図が発表されています。 
 2014年(平成26年)実測値と2015年(平成27年)予測を以下に示します。
平成27年は,関東の飛散が特に多いようです。逆に近畿,中国,四国地方の飛散量は例年並みかやや少なくなる見通しです。
       
             2014年実測値と2015年予測 <読売新聞 H27,2.16 より引用>

 環境省から,「花粉観測システム(はなこさん)」のHP(
http://kafun.taiki.go.jp/)で,花粉情報が提供されています。これは,全国134か所に設置された測定器が1時間毎に観測した花粉数を提供するサービスで,2002年度から続けられているものです。

スギ花粉の発生量は,その前年の夏(7月頃)の気象秋の花芽の成長具合とに密接に関係していて,夏(特に7月)に暑くて雨が少ないとスギ雄花の成長が良く,次の年に飛ぶ花粉の量が多いようです。
 <参考> 過去のスギ・ヒノキ花粉飛散状況
N0. 夏の気候 飛散状況 備考
(a) 平成15年 普通 大量飛散 関東地方は4年連続,関西地方は観測史上2番目
(14年の5倍)。
(b) 平成16年 猛暑 少ない
(c) 平成17年 普通 大量飛散 花粉の飛散量は例年の2〜3倍。昨年の10〜30倍
(d) 平成18年 7月は雨が多く,気温が低かった 少ない 平年並みか,その半分程度
(e) 平成19年 7月は寒かったが,その前後では暑かった 少ない 前年の影響で少ない。
(f) 平成20年 例年並み 予測機関により,予測がかなり異なる。
(g) 平成21年 初期に冷夏 例年より多い (a)東北は例年よりやや多め,
(b)関東,東海,九州は例年並み,
(c)近畿・中国は例年並みかやや多め
(h) 平成22年 猛暑 例年並みか例年より少ない (a)東京〜静岡では,2月初旬から飛散が始まる
(b)東日本・北日本でも例年より早くなる
(i) 平成23年 例年より多い(平成21年の2〜10倍) (a)関東・甲信越・東北南部では10〜20日飛散時期早まる。
(b)全国的には例年並みの2月上旬〜3月上旬に飛散が始まる。
(c)近畿〜東海地方では特に多い(10倍以上?)予想あり。


(2)花粉症とは:
 花粉症とは,スギなどの特定の花粉によって起こる季節的なアレルギー性疾患で,くしゃみ・鼻みず・鼻づまり・目のかゆみ・充血などを主な症状とし,頭痛や全身の倦怠感を訴える人もいます。
 花粉症になると肉体的に苦痛なだけでなく,精神的にも変調をきたし,日常生活に大きな影響を与えますが,この症状の根治療法はまだ無いようです。今や国民の7人に1人(1,800〜2,000万人!)が花粉症に苦しんでおり,政府の試算では,このような花粉症による総損失額は,2000億円以上にもなるそうです。


(3)花粉症の原因: 以下のように発症すると考えられています。
(a) 花粉が空気と共に吸い込まれて,鼻の粘膜に張り付く。
(b) 花粉からタンパク質が溶け出して,体内に入る。
(c) このタンパク質は人体にとっては異物(→抗原,アレルゲン)であるため,体は,IgE抗体という免疫を作り,これに対抗しようとする(免疫反応)。
(d) アレルギー体質の人は少しずつ抗体を蓄積させていき,ある許容量を超えると発症する(コップに溜まる水の例があげられています)。
(e) 上記タンパク質に反応して,粘膜の組織中では肥満細胞が,また血液中ではIgE抗体がヒスタミンなどの化学伝達物質を放出する。
(f) ヒスタミンは抗原を排出しようとして,神経を刺激し,くしゃみや鼻水を出す。目も抗原を洗い流すため涙を出す。その結果,花粉症となります
 
(注)
花粉症の共犯として, (a)異種タンパク質,(b)ストレス,(c)タバコ,(d)排気ガスなどがあげられています。
このうち,(d)については,ディーゼル車の排気ガス等に含まれる
粒子状物質(PM)が悪影響をおよぼしていると推定されています。 ⇒ これについては,ありがたくない粉粒体(2)に関連事項を記入しています。

<他の説>昔は花粉症なるものがなかった理由の一つとして,寄生虫を持っていた人が多かったことを理由に挙げる研究者もいます(→東京医科歯科大学 藤田紘一郎教授)。昔なら寄生虫に向いていた免疫反応が,(抗菌意識の高まりで,寄生虫がいなくなり)近年では花粉に向いているのだそうです。


(4)花粉症を引き起こす花粉の例:
 スギ花粉以外にも,ヒノキ,シラカバ,イネ,ブタクサ等報告されているだけでも50種類以上の原因花粉が有ります。 スギもヒノキも無い北海道ではシラカバが,ヒノキの少ない東北と北陸ではスギがそれぞれ花粉症の原因花粉となっています。(植物の植生が異なる沖縄ではスギ花粉はほとんど無いそうです。)

(a) 樹木  :スギ,ヒノキ,シラカパ,コナラ,クヌギなど。(2月から5月にかけて開花)
(b) イネ科の植物  :カモガヤ,オオアワガエリなど。(2月から6月にかけての初夏に開花)
(c) その他の植物  :ブタクサヨモギなどのキク科の植物。(8月から10月にかけて開花)

外国の例では,英国ではカモガヤが,米国ではブタクサが主な原因花粉とされています。


(5)スギ花粉症広がりの理由:
 昭和20年代の後半から拡大林業政策が始まり,日本全国一斉にスギの植林が行われました。スギは樹齢25年〜30年で大量の花粉を飛ばします。その結果,昭和50年代に入ってから急激にスギ花粉症が増えたと考えられています。また,広域化の原因は,花粉が小さく軽いため,風に乗って数10キロから時には100キロ以上も飛んで行くためと考えられます。それに加えて,都市環境(大気汚染など)や摂取栄養の変化なども要因と考えられています。

 なお,
ヒノキはスギよりやや遅く昭和40年代に多く植林されています。最近では植林される面積がスギを上回っており,今後更に増加すると考えられています。


(6)スギ花粉症の発見:
 スギ花粉症は,日本では昭和38年(1963年)に栃木県日光地方で最初に発見されました(東京医科歯科大学の斉藤洋三先生らによります)。なお,その2年前には,日本最初の花粉症とも言われる「ブタクサ花粉症」が見つかっているようです。
(世界的に見ると,100年以上前の1873年に,花粉が原因のアレルギー性鼻炎の症例が報告されているようです。)


(7)花粉の測定方法:
(a) ダーラム法
(重力法)
2枚の直径約23cmの円盤を9cm離して置き,その間にワセリンを塗布したプレパラートを1日間放置しておき,その後にプレパラート上に落下した花粉を顕微鏡で目視計数するものです。結果は,総個数や個数/cm2で表示されます。
(b) (体積法) 国際的には,空中花粉濃度測定する方法が標準的となっています。
(c) 最近の方法 レーザー式パーティクルカウンターの原理を利用した花粉自動計測装置が開発されており,これを用いたリアルタイム計測およびオンラインでの情報収集(日本気象協会等)等が行われています。


(8)花粉症対策:この市場は1,300億円〜1,400億円/年の規模が見込まれています。
           また,この40%がアレルギー性鼻炎で,この大半が花粉症向けと見られています。

                                                                   <日刊工業新聞/'04,2,18より>

       
各種対策を以下に示します。
 (a) 舌下免疫療法
(最近最も注目されています) 
スギ花粉症エキスを含む『 シダトレン(商品名)の服用:   
  (a)スギ花粉症患者の60〜70%が完治すると言われている。
  (b)スギ花粉症が治まる6月頃から始める。
  (c)
シダトレンを毎日1度,舌の下に垂らし,2分間保持した後,飲み込む。
  (d)保険適用になる(2週間で1,000円程度の治療費)。

<原理>日常生活で取りこまれるよりも多い量のスギ花粉エキスが体内に入ることにより,IgEの増加を抑える働きが活性化し,IgEと花粉との結合を妨害する抗体が増える。
<利点>自宅で簡単に適用でき,長期間の症状緩和が期待できる。
<注意点>治療期間は最低2年間,口内炎・のどのかゆみなどの副作用,医師の指導が必要など。
(b) 抗アレルギ−薬 (a)抗アレルギー薬 : 症状を出にくくする
  
抗ヒスタミン薬  : 出てしまった症状を抑える
ALLegra(アレグラ) 抗ヒスタミン作用も持つ抗アレルギー薬
(塩酸フェキソフェナジン)
アルロック 同上(塩酸オロパタジン)
アレジオン 同上(塩酸エピナスチン)
ステロイド点鼻薬 出てしまった症状を抑えるために使う
(c) 花粉対策グッズ (a)食品,飲料
甜茶(てんちゃ) (中国産,バラ科の落葉低木,甘みのあるお茶,ポリフェノールが多い)
シジュウム茶 (南米産熱帯性植物)
凍頂烏龍茶(とうちょううーろんちゃ) (台湾の凍頂山産)
L-92菌入り飲料
「インターバランスL92」
(ヘルシーグルト)
機能性乳酸菌L-92菌
(ラクトバチルス・アシドフィルス L-92株)(
C社
BB536菌入りヨーグルト Mo社と東北大学)
<日刊工業新聞/’04,12,07より>
KW乳酸菌入り緑茶「体質茶」 K社乳業の共同研究による)
LG21菌入りヨーグルト,ドリンクタイプ
「プロビオ」
(Me社
トマトのちから トマトの皮からの抽出成分NGC「ナリンゲニンカルコン」入り(K社)
赤紫蘇抽出成分入り飲料 (紫蘇はアレルギーに良い?)

(b)錠剤 :
「トマトのちから」 トマトの皮からの抽出成分「ナリンゲニンカルコン」入り
(K社)
KW乳酸菌 「ノアレ」 K社K乳業の共同研究による)

(c)スプレー :
静電気防止剤 衣服への付着防止
「花粉ガード」
(スギ花粉の破裂を防ぐ技術)
(L社開発)
平成16年12月発売

<日刊工業新聞/ '04,11,5より>
特殊無機酸化物で覆った10nm(=0.01μm)のハイテクシリカ(SiO2が,花粉表面の膜構造を変え,花粉を割れにくくする。⇒花粉の中あるアレルギーの誘因物質が,鼻などの粘膜に付着し,破裂する働きを防止する。
「花粉 服でブロック」(F社開発)
「花粉ついてますよ」
(A社) 
ナノテク効果で花粉の付着を防ぐ)
平成16年12月〜17年1月発売
日刊工業新聞/ '04,11,5より>
『服や布団にスプレーすることにより,繊維の表面にポリシロキサン誘導体の凹凸被膜をつくり,花粉と繊維の接触面積を小さくして,花粉を付きにくくする。
⇒この被膜は“ご飯の付かないしゃもじ”と同じしくみで,花粉が付きにくく、付いても落ちやすくする。

(d)その他
マスク 「超立体マスク」
(立体構造のもの)
メガネ サイドをガード
鼻栓 吸い込む花粉を小フィルターでさえぎる
花粉 鼻でブロック(クリーム) F社製。鼻の中にクリームを塗り,保護粘膜を形成。

(d) 難付着性衣類 (a)花粉が付着・透過しにくいようにした高密度繊維素材による衣服
(b)花粉やホコリの付きにくい静電気防止素材による衣服
(c)繊維の表面加工により付着を防ぐ衣服など
(e) 無花粉スギ (a)1992年富山県林業技術センター林業試験場の開発した「はるよこい」
(b)2004年独立行政法人の林木育種センター(茨城県日立市)の開発した
「爽春(そうしゅん)」など。
無花粉スギは,普通のスギと同様に雄花を付けるが,成長の過程で花粉が正常に発達しないため,花粉ができず,飛散もしない。
<日刊工業新聞/ '05,1,26より><読売新聞/ '05,1,24より>

(c)富山県森林研究所・斎藤真己主任研究員の開発した「立山 森の輝き」
 花粉を作る遺伝子に突然変異が起こったもので,最終的に全ての花粉が壊れてしまう変異体 。
 (上段のVTR参照)
 
(f) スギ花粉症
緩和米
(a)*****スギ花粉症緩和米*****
(独)農業生物資源研究所
(茨城県日立市)開発。スギ抗原米の1種で,花粉症アレルギーの原因となるタンパク質を作り出す遺伝子を人工的に作り,イネに組み込む。継続的に食べることにより,花粉症の症状を緩和する。一方,遺伝子組み替え作物であり,環境や人体への安全性の配慮も求められる。
読売新聞/ '05,2,4より>

(b)
*****花粉症緩和米 食品か医薬品か*****
厚生労働省は,農水省に,花粉症緩和米を食品ではなく,医薬品として扱うべきだとの考えを伝えた。これに対し農水省は,「花粉症への「効能」とすれば医薬品だが,「特徴」なので食品だ。」などとと反論している。
<読売新聞/ '05,2,16より>

(c*****花粉症緩和米を試験栽培

   ( 
国内発の遺伝子組み換え作物  2012年度にも実用化?)
*****
N製紙は6日,農林水産省の委託事業として,食べるだけで花粉症を和らげる効果がある「スギ花粉症緩和米」の試験栽培を来年1月に始めると発表した。遺伝子組み換え技術を使うもので,2012年度の実用化を目指す。実現すれば,国産発の遺伝子組み換え作物になる見通し。
 スギ花粉の一部で,アレルギーの原因となるタンパク質(エピトープ)を作りだしてコメに蓄積させる遺伝子を人工的に作り,イネに組み込む。育ったコメを食べ続ける事で,身体が次第にスギ花粉に慣れ,アレルギー反応がおこりにくくなるという仕組み。 N製紙は,紙の素材となるユーカリの栽培を通じて遺伝子組み換え技術を研究しており農水省所管の農業生物資源研究所と共同開発した(以下略)。
<読売新聞/ '06,9,7より>



スギ花粉(雄花)の観察:
 (赤っぽい枝の目立つ杉の木) (スギ花粉(黄色粉体)と雄花)
 山間部に行くと,他より妙に赤っぽい木々が目立ちます。
近寄って見ると,枝にはびっしりと雄花ができています。赤く見えるのはこの為でした。
枝を手に取り,揺さぶってみると,
真黄色の花粉(雄花)が飛散しました。
 この花粉を集めてさわってみると,さらさらすべすべしていて,流動性が非常に良好でした。  
原因を調べると,以下の写真にも示されるように,1個1個の花粉粒子がほぼ球形に近いためと分かりました。大きさは
約30μmです。






飛散する花粉
<再生ボタンを押してください>
空を舞う スギ花粉の秘密
<再生ボタンを押してください>

NHKTV(2017,0307)より引用


<電子顕微鏡観察>
低倍率観察
      (参考)アレルギーを引き起こす物質は,スギ花粉の外側表面に多いそうです。


ヒノキ花粉の観察:
スギ花粉は,1月から4月頃にかけて飛散しますが,ヒノキ花粉は、スギより1か月ほど遅れて飛び始め,スギ花粉の少なくなる3月下旬から4月に多くなり,5月頃まで続きます。

 スギ花粉の色は真黄色でしたが,ヒノキ花粉の色はオレンジ色です。

(左)
ヒノキ花粉の低倍率観察
 いびつな袋状の花粉
です。

(左下)〜(下)ヒノキ花粉の高倍率観察
花粉の大きさは,スギ花粉同様
約30μmです。

歴史の解明に役立つ花粉:
(花粉の名誉のために)
花粉は土の中でもそのままの形で残るため,ボーリングにより土の堆積状況と花粉の種類や分布状況を調査すれば,過去(当時)の気候や植物の生育状況などが分かります。
********************************
<再生ボタンを押してください>(NHK,BS103 2011.8.15から引用)
<音声あり>

参考
花粉に似た胞子の場合: ツクシからの胞子の放出の様子はこちらです。
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