どぶろく祭り
野神神社
(琵琶湖の周辺(67))
(平成25年5月26日撮影) |
<音声あり> |
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滋賀県栗東市上砥山の野神神社で“どぶろく祭り”が行われているというので行ってきました。
祭りは毎年6月1日に近い日曜日と決められていて,今年は5月26日でした。
調べると草津市追分町にも野神神社があり,こちらでは11月に“甘酒祭り”を,また甲南町の総社神社では7月に“麦酒祭り”をされているようです。前者は同様の祭りかもしれません。
(近江は,ふなずし,ドジョウズシ,ジャコズシ・・・などのナレズシやこの種の酒造りなど,発酵技術が昔から盛んだったことがうかがえます。)
ここでいただいたお酒は,見た目は甘酒でしたが,アルコール度数12.9のれっきとしたお酒でした。しかし,飲みやすく,とてもおいしく頂きました。
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(びわ湖放送 『淡海をあるく』(2013,5,26)から引用)私も偶然この中に写っています(^^)/~。 |
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日吉神社 |
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これは上砥山地区にある「日吉神社」で,野神神社はその境内にあります。
日吉神社の祭神はニニギノ命とコノハナサクヤ姫ノ命で,
創建は第52代嵯峨天皇の時代,弘仁癸巳(813)年とされています。
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野神神社での神事
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野神神社は,日吉神社に比べると小さな神社でした。 |
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今年の当番であった2軒の方と杜氏さんがお祓いを受けています。 |
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神饌は中央に今回のどぶろくがあり,他に野菜類とするめ,昆布などです。 |
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いよいよおひろめ |
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神酒殿(みきでん)で醸造されていたどぶろくが,かつぎ出されてきました。神酒殿には3重の鍵がかかっているそうです。 |
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見た目は甘酒ですが,きっちりアルコールの匂いがしています。
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税務署の調査では,アルコール度数12.9度とのことでした。 |
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杜氏さんの挨拶。もちろん氏子で,今年で5年目とのこと。例年は,4月から2ヶ月仕込むそうですが,今年は5月3日に仕込み,1ヶ月足らずでできたことになります。
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自治会長さんの音頭で『乾杯〜〜』。私も頂きましたが,癖もない,おいしいお酒でした。
杜氏さんもほっとされていました。 |
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5月の,そよ風が吹き初夏のもと,田植えも終わり,皆が集まってお酒を酌み交わすのは,地域の人達にとって,この上ない喜びであったと思います。 |
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<出されていた料理> |
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料理は五穀豆(しいたけ,にんじん,レンコン,ごぼう,昆布),するめ,ちりめんじゃこ,つけもの,“ちしゃ”の葉のごまあえなど。
ちしゃは,毎年種から育てるそうです。 |
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どぶろくの作り方を聞きました:
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長年伝承された技術と当番および杜氏の方の努力の賜です。
(a)材料は,米,麹,酵母菌。
(b)米は,前年に当番が醸造用に植えたものを使う(注)1。
今までは「日本晴れ」」でしたが,今年は「秋の詩(うた)(注)2」でした。
(c)木樽を使っていたときは,酵母菌を入れる必要がありませんでしたが,
衛生上の点からステンレス樽に替えたことにより,酵母菌が必要になったそうです。
(d)毎日10:00と3:00に攪拌が必要⇒第一優先なので大変とのこと。
(e)温度は20〜30℃から始めて,最終8℃まで下げたとのこと。
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(注)1.お田植祭や収穫際も行われているようです。1年を通した行事なんですね。来年は拝見したいと思います。
(注)2.1998年に「秋の詩(あきのうた)」と命名されました。1990年に「コシヒカリ」と「吟おうみ」から生まれた滋賀県産品種です。
(注)3. 近江米の「みずかがみ」と「秋の詩」が,平成28年2月25日,一般財団法人「日本穀物検定協会」が実施する平成27年産米の食味ランキングで5段階評価で最上級の「特A」に選ばれました。 同協会は,産地・品種ごとに全国(東京都と大阪府、沖縄県を除く)の139銘柄について,コメの外観▽香り▽味▽粘り▽硬さ▽総合評価−6項目で評価。その結果,県内で初めて2銘柄が同時に特Aを獲得しました。
「みずかがみ」は暑さに強く,ほどよい粘りとまろやかな甘みで「冷めてもおいしい」という強みを持ちます。また,「秋の詩」は粒が大きく,適度な粘りとほのかな甘さで「どんなおかずにも合う」といわれています。
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日本酒の起源 : |
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私たちの祖先がいつ頃からお酒を口にしていたのか?
『発酵』技術で有名な小泉武夫さんの著書にはお酒と麹(糀)に関する記述があり,以下に紹介します。
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『日本酒は日本人が発明したオリジナルのお酒です。』
古代のお酒 |
天然のアルコール発酵
(自然界にある酵母を利用し,
果物に含まれる果糖やブドウ糖をお酒に変えていた) |
池内遺跡
(秋田県大館市) |
縄文時代前期 |
ヤマブキ,キイチゴ,ニワトコなどの果実の種が植物の繊維に包まれて出土 |
井戸尻遺跡
(長野県富士見町) |
縄文時代中期 |
土器の内側にヤマブドウの種や皮が付着 |
口噛(か)みのお酒 |
(a)雑穀をよく噛んで,唾液により澱粉を糖化(ブドウ糖)する。
(b)容器に入れておくと空気中の野生酵母が落ちてきて発酵し,アルコール(酒)とCO2に分解する。 |
古事記 |
和銅5年
(712年) |
「この御酒(みき)をかみけむひとは,その鼓,臼(うす)に立てて歌いつつ,かみけれかも,舞いつつ,かみけれかも,この御酒の,御酒の,あやに,歌楽し,ささ」 |
大隅国風土記 |
8世紀
平安時代 |
「男女一所に集まりて,米を噛みて,さかぶねに吐き入れて」 |
米麹によるお酒 |
強飯(こわめし;蒸した米)に生えたカビ(麹の発見)で酒を醸造 |
播磨国風土記 |
713年 |
「大神の御粮(みかれい)沾(ぬ)れて黴(かび)生えき, すなはち,酒を醸(かも)さしめて,庭酒に献りて宴しき」 |
☆“麹”の語源 :
蒸した米に黴が生えたもの=「カムタチ」(噛む+黴立ち)⇒カビタチ⇒カムチ⇒カウチ⇒カウジ⇒コウジ(麹)と変化しました。
平安時代末期〜室町時代にかけて,すでに京都には,微生物の黴(カビ;麹)を売る商売(種麹屋)があったそうです。
☆“麹(こうじ)”と“糀(こうじ)”:
麹は,中国から伝来した漢字(←中国では,麦から麹を作る)
糀は,江戸時代に日本人が作った漢字(←米にできた糀が花のように見える)
☆
令和元(2019)年9月3日,野洲市三上のl麹屋である“「麹屋吉右衛門”さんで手作り味噌を買って来ました。この店の外観は普通の民家のようですが,創業180年とのことで,驚きです。
ここは以前(平成26年5月11日)京都技術士会の人たちと登った三上山(近江富士)の目の前です。
☆お酒の分類
精米歩合(磨き具合) |
50%以下 |
60%以下 |
60%以下または
特別な製造方法 |
70%以下 |
規定なし |
使用原料 |
米,米麹 |
純米大吟醸酒 |
純米吟醸酒 |
特別純米酒 |
− |
純米酒 |
米,米麹
醸造アルコール |
大吟醸酒 |
吟醸酒 |
特別本醸造酒 |
本醸造酒 |
− |
特徴 |
吟醸造り,固有の香味,色沢が特に良好 |
吟醸造り,固有の香味,色沢が良好 |
香味,色沢が特に良好 |
香味,色沢が良好 |
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<参考文献> |
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1 |
「近江の祭礼」:滋賀県神道青年会編著,(株)近江文化社刊,1991,8,1
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2 |
「発酵は力なり」:小泉武夫著,NHK人間講座,NHK出版発行,2002,6
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3 |
「食べるということ−民族と食の文化−」小泉武夫著,NHKラジオテキスト,NHK出版発行,2012,1 |
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4 |
「酒にまつわるおもしろ話」:小泉武夫著,高圧ガス,vol50,no.1,2013 |
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